超解説:PMDD(月経前不快気分障害)とは?【症状・診断・治療法】

PMDD症状に悩んでいる人「生理前になると、普段はそんなことないのに途端にイライラして自暴自棄になって、自分が大嫌いになる。家族や友人ともうまく行かないし、本当にどうしたらいいんだろう。」
PMSは聞いたことあるけどPMDDは聞いたことないな、という方もいるかもしれません。
簡単に言うと、「PMSより重症なやつ」です。
本記事の内容
生理前から生理中のメンタルバランスにちょっとでも悩んでいる人がいたら、ぜひ最後まで読んでほしいと思います。
なんせPMDDがあると思われる女性の約90%は未受診という報告もあるくらい、未だ隠れた病気だからです。
皆さんに知ってもらい、困っている友人や家族がいたら「もしかしてそれ、PMDDなんじゃない?」と知恵を差し上げてみてください。
生理前の辛い症状に悩む人が一人でも減ればいいなと思います。
1.「PMDD」とは
PMDDとは生理前の数日から2週間にわたって、うつ病と同じくらいの重たい精神症状や身体症状が現れるものです。
2013年DSM-5により、抑うつ障害郡に分類されました。
他疾患との合併が多い
- 双極性障害
- 気分障害
上記のような疾患を合併していることが多いといわれています。
また、大うつ病性障害と産後うつ病の重要なリスク因子でもあるようです。
小さい頃の虐待も、PMS・PMDDのリスクを増加させることも明らかになっています。
PMDDはなぜ起こるのか
PMDDは黄体期後期のエストロゲンが減少する時期に一致して症状が発現します。
研究によると、PMDD患者とその他女性の間で黄体期のエストロゲンやプロゲステロン濃度に差はみられないと言われています。
またアノプレグナノロンというホルモンに着目すると、PMDDのある人は黄体期のアノプレグナノロン値が低いという報告が多くあります。
反面、これにも差はないんだ!と言っている報告もあって、実のところ未だ解明されていないのです。
性ホルモンと気分の関係を明らかにすることはとても難しいのですね
※アノプレグナノロンとは
多くの女性が気づいていない
PMDDは生理のある女性の3~8%に存在するといわれています。
そのうち、どれくらいの女性が受診できているのか、というと。
なんと90%の患者が診断を受けていません。
PMDDは治療によって症状が軽くなる病気ですが、症状を訴えて受診する人たちがものすごく少ないのです。
2.「PMDD」の症状
PMDDの症状
- 感情が不安定になる
- わけもなくイライラする
- 原因もなく自分を批判する
- 好きだったものにすら興味がなくなる
- なんとなく疲れやすく、集中力が続かなくなる
ここに挙げたものはほんの一握り。
ストレスとともに悪化して、家庭や仕事でのストレスが増える30代に症状悪化がみられることが多いといわれています。
「PMDD」の診断
DSM-5による診断のガイドラインを表記しました。
興味のある方はポチっとご覧ください↓
「PMDD」受診するべき科
絶対にどっち!というきまりはないです。
どの文献でも、「連携が大事」と書かれているだけでどちらが優先されるかの記載はありません。
自分の家の近くにある病院や、行きやすいと感じる方でいいと思います。
心療内科だと初診が予約制のところも多く、今だ!というときに行けない可能性も十分あるので事前のリサーチはかかせません。
「PMDD」の治療
- ①SSRI(抗うつ薬の一種)
- ②ホルモン療法
- ③漢方薬
- ④カルシウム製剤
- ⑤ハーブ
- ⑥食事療法
- ⑦手術(最終手段)
①SSRI(抗うつ薬の一種)
SSRI(selective serotonin reuptake inhibitors)は「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」といって、抗うつ薬の一つです。
直接的に3α‐HSDの活性を上げて、プロゲステロンの代謝を促し脳内のアノプレグナノロンレベルを上昇させることで効果を発揮します。
精神科のお薬というと、「ずっと飲み続けなくちゃいけないんじゃない・・?」と思うかもしれませんが、そうでもないようです。
黄体期のみに使用する飲み方でも効果がある、と注目されています。
②ホルモン療法
「ピル」による治療です。
低用量・超低用量ピルが用いられ、排卵を抑えることによる月経前症状を緩和させることが期待されています。
ピルを使うことによって症状が軽くなる症例報告は多くありますが、実際にランダム化試験というもので有効性が確認されているものは少ないのです。
参考文献*3によると、ヤーズはPMDD症状の軽減に有効だと確認されています。
③漢方薬
月経に関連した症状、その他精神症状によく用いられるお薬です。
参考文献*4では、「漢方はPMS/PMDDに非常に適合した治療である」と言われています。
有効生薬が複数配合されていて心身両方に働きかけることができること、使用しやすいことがメリットととして挙げられています。
④カルシウム製剤
大規模なランダム化試験において、1,200mg/日のカルシウムを投与したものはそれ以外と比較し、精神・身体症状が優位に改善したといわれています。
⑤ハーブ
日本では2014年4月よりプレフェミンという名前でPMS治療薬が発売されています。
もともと、欧州ではPMSや月経関連障害に広く使われてきていたそう。
日本でももっと広がるといいな、と思います。
⑥食事療法
- 炭水化物やタンパク質を多く含んだ食事
- 精製糖や塩分、カフェインを控える
このあたりが推奨されています。
⑦手術
卵巣を2つとも摘出する手術をすることがあります。
これには適応となる条件が細かくあるので、解説しますね。
「GnRHアゴニスト」という性腺刺激ホルモン放出ホルモンがあります。これは排卵抑制をするホルモンですが、これがPMDDに効果的である場合です。
GnRHアゴニストなしでの治療では閉経するまで快適な日常生活を送ることが難しいと判断される場合に、適応となります。
一度とったら再度つけることができない手術ですから、「本当にGnRHアゴニストでPMDD症状が消えるのか?」を念入りに検討する必要があります。
余談:保険診療について
「PMDD(月経前不快気分障害)」という名前の保険病名はありません。
つまりどういうことかというと。
私たちは病気をすると、なにかしらの診断がつきます。
その診断に沿って効果的だろうと予想される処方が出され、服薬していく。
しかし、「PMDD」という保険病名がありませんので、仮にSSRIやピルが処方された場合にどうなるかといいますと。
- SSRIが適応→「うつ病、うつ状態」という診断
- ピルが適応→「月経困難症」「子宮内膜症」という診断
このように、別の診断名がくだされることになります。
なんだかおかしな話ですよね。
※ただし、これも病名で処方可能はお薬は漢方含め一切ありません。
まとめ
以上、PMDDについて解説しました。
「自分の性格だ」と思って諦めていたことが実は病気で、薬によって緩和できる可能性があります。
ちょっとでも「あれ、コレ私かな?」と思ったら、ぜひ近くの婦人科もしくは精神科(心療内科)に受診してみてください。
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それでは、今回は以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
参考文献:
- 白土 なほ子.(2017).「PMS,PMDDの診断と治療―他科疾患との鑑別―」.『昭和学士会誌』77(4),360-366.
- 若月 百美.(2017).「月経前不快気分障害症状に対する心理社会学的因子の影響」.『北海道大学博士甲』12585,
- 大坪 天平.(2018).「精神科からみたPMS/PMDDの病態と治療」.『女性心身医学』22(3),258‐265.
- 江川 美保.(2019).「PMS/PMDDの周閉経期管理ー基本的治療方針と難治症例の診療経験からの考察」.『医学のあゆみ』269(1),52-57.
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